おすもうさん天国

新米スー女の相撲日記

豪栄道という力士~2018年初場所、四日目から六日目~

本日大相撲七日目を迎える。
白鵬稀勢の里、二人の横綱が休場という波乱の初場所。ひとり安定感のある相撲を取り続ける鶴竜の姿が一際輝いている。


しかし私は今回は別の力士に注目している。それは大関豪栄道だ。

 

豪栄道 (澤井豪太郎)
大阪府寝屋川市出身。境川部屋の力士。2014年の秋場所よりずっと大関の地位を守っている。

豪栄道は強い。それは大関という地位の在籍期間が物語っている。人気もある。身体はそこまで大きくないが、相手の廻しを取るとぐいぐい土俵際までもっていく力強さがある。

そんな豪栄道、実はちょっと精神面が弱いのだ。

去年の秋場所、三横綱が休場という中、角番の豪栄道は調子がよかった。以前全勝優勝を果たした時も角番だったらしく、窮地に立たされると燃えるタイプなのかもしれない。三横綱が休場、日馬富士は不調、さらに高安も照ノ富士の二人の大関も休場。当然豪栄道優勝の声が高まった。しかし序盤好調だった豪栄道、優勝への期待が高まった途端、黒星が続くようになっていったのである。しかし何とか白星を拾い続け、トップを守り続ける。
そして千秋楽、VS日馬富士。勝てば優勝、負ければ優勝決定戦という緊迫の一番、豪栄道はあっさり負けた。
さらに優勝決定戦、これまたあっさりら負けた。
やはり日馬富士という横綱な格が違うのか、または日馬富士横綱の意地を見せたのか……。それにしても呆気なく負ける姿には「おい!!! 豪栄道!!!」と言わずにないられなかった。

 

しかしそんな豪栄道、今場所は違った。テレビ越しでも気迫に満ちているのが分かる。立ち会いでの集中力が桁違いだ。初日から四連勝。誰もが豪栄道の姿に驚いた。解説陣も皆豪栄道の仕上がりを褒めた。

特に四日目の北勝富士戦。白鵬から金星をもぎ取った調子の良い北勝富士に、豪栄道は一歩も引かなかった。
二人とも立ち会いのスピードが下位と比べると桁違いだ。身体全体を使って相手に猛スピードでぶち当たっていく。差されたくない北勝富士豪栄道を必死に突き放す。しかし豪栄道怯まない。右をのぞかせるとそのまま北勝富士を土俵際まで押し込む。そして右で掬うように投げた。決まり手は寄り倒し。

私はテレビの前で痺れた。なんだこの圧力は。なんだこの気迫は。これが豪栄道という大関の本来の姿なのか!!!


私は今まで豪栄道のことを誤解していた。実力はあるのになんだか煮え切らない力士だと思っていた。しかし伊達に21場所大関の地位を守り抜いてはいない。これが本物の大関なのか。

やっぱり相撲は面白い。見るものの心を動かし、熱くさせ、魅了する。
相撲は個人技だ。力士達は日々自分の身体を磨く。彼らの武器は己の身体のみ。厳しい稽古、怪我、体調、プレッシャー。様々なものと戦いながら、彼は回しひとつで土俵に立つ。誰も頼ることはできない。それはどんなに孤独な戦いだろう。でも彼らは戦う。同じく心身ともに磨きあげられた相手と。そして自分自身と。そしてより多く勝利したものが、番付の上に名前を並べることができる。

 

初場所五日目、豪栄道VS栃ノ心。この二人の戦いもすごかった。ジョージア出身の力士栃ノ心も、豪栄道の引けを取らず今回は調子が良い。そんな栃ノ心に豪栄道は寄り切られてしまった。でも内容は素晴らしかった。お互い一歩もひかず、ひたすら攻め続けていた。やはり今場所の豪栄道はひと味違う。1敗がなんだ。今の豪栄道ならまだまだやれる!

六日目、嘉風相手に豪栄道はあっさり手をついた。

 

おい!!!豪栄道!!!

 

もう足が全然ついていけてなかった。完全に揃ってしまっていた。苦手な嘉風相手に変に力が入ってしまったのか、はたまた昨日の負けを引きずっているのか。とにかく昨日までの集中力が完全に切れてしまっているようにみえた。


でも私はそんな豪栄道を、がっかりはしても嫌いになったりはしない。だって人間らしくてかわいいんだもの。
苦手意識のある力士相手に戸惑うのも、1度のの黒星で調子が落ちるのも、まあ人間誰しもそうなっちゃうよね、と言わずにはいられない。なにしろ横綱白鵬稀勢の里ですら調子を崩すのだから。

 

私が豪栄道に注目しているのには、もうひとつ理由がある。去年発売された豪栄道の自伝を読んだからだ。

 

すもう道まっしぐら! (集英社みらい文庫)

すもう道まっしぐら! (集英社みらい文庫)

 


この本見たの通り、児童向けに書かれたものだ。漢字には全て読み仮名がふってあるし、文体も優しく大人ならスラスラっと読めてしまう。
豪栄道の子供時代から関取になるまでの物語。豪栄道という力士がどういう気持ちで相撲と向き合っているかがよく分かる1冊だ。なぜ彼が児童書レーベルから自伝を出したのかはよくわからない。しかしこの本には、相撲の楽しさ、そして人生辛いことがあってもグッと我慢をすれば強く生きていけるという豪栄道の美学が詰まっている。
おそろく子供がこの本を読めば、おすもうさんってかっこいいんだな、と思うのではないのだろうか。新弟子の確保が難しくなっている今、豪栄道なりに角界のことを考えて、児童書レーベルから自伝を出したのかもしれない。

去年初めて言った名古屋場所豪栄道の名前を必死に叫び応援する子供たちの姿が、今でも私の目に焼き付いている。

 

さてさて、今場所の豪栄道はどこまで頑張れるのだろうか。二連敗中といってもまだ前半。展開によっては優勝の可能性もない訳では無い。
しかし優勝うんぬんより、私は豪栄道に思いっきり相撲をとって欲しい。今回の豪栄道はひと味違うぞという姿をもっともっと見せて欲しい。
もちろん悪い引き癖があった時は、おい!!! 豪栄道!!! と叫ぶ。
喜んだり感動したり怒ったりしながら、彼が土俵を下りるまで、私は豪栄道を応援し続ける。